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失業増大による社会の不安と不満が、一気に共産党の中枢へ向かうのを防ぐために、対外関係での緊張を高め、不満を外に向かわせる必要がある。(1)

『中国大減速の末路』  日本はアジアの盟主となる

長谷川慶太郎   東洋経済新報社    2015/7/2

<高度な技術力を背景に、日本経済が世界を牽引していく>

・中国は共産党独裁国家の一つの特性として、絶え間なく周辺への拡大膨張政策をとる。経済が減速基調をとってきた今日、この傾向はいっそう拍車がかかる。経済的には過剰生産・過剰供給のはけ口を国外に求めなくてはいけない。AIIB(アジア・インフラ投資銀行)の設立は、まさに金融面でこの対策に利用されるものである。

 政治的には、国内でのバブル崩壊・企業倒産、失業増大による社会の不安と不満が、一気に共産党の中枢へ向かうのを防ぐために、対外関係での緊張を高め、不満を外に向かわせる必要がある。

・経済が安定的に成長して国民が一様に豊かになっていくならば、そのような不満も顕在化しないが、成長がとぎれ、格差拡大、失業の増大、生活不安という事態になれば、不満は一挙に党中央に向かう。

<医療産業は成長の柱になる>

<進化する医療と拡大する医療市場>

・現在の医療産業は、医療機器産業は30兆円、医薬品は100兆円という規模で、合計130兆円の巨大産業である。そのうち、日本の医療機器産業は2.5兆円、薬品は10兆円規模である。世界人口の増大、経済の拡大、さらには先進国を中心に高齢化が進んでいくことで、この市場が大きく成長することは間違いない。特に、当面はアジアにおける市場の成長が著しい。その中で、日本の果たす役割はいっそう増大すること間違いない。

<世界シェアの7割を占めるオリンパスの内視鏡>

・日本の医療機器の中で、世界トップの技術を有するのが内視鏡の技術である。

<医療の進歩には安定した資金の手当が必要>

・大きな視点で見れば、いまや医療を良くしようと思えば、安定的な資金の手当は不可欠なのである。経営体としての病院となると、日本はまだまだ世界レベルに達しているところは少ないのが現状だ。この問題をどうクリアしていくのか。日本の医療産業のさらなる発展は、この問題とどう向き合っていくかにかかっていると言えるだろう。

中国経済の大失速が鮮明になった

20154月には、預金準備率を一気に1.0パーセントも引き下げている。これはリーマン危機以来の大幅な緩和である。通常は0.5パーセントずつ下げていくもので、一気に1.0パーセントも引き下げるのは異例の措置と言ってよい。

 それくらい大幅な緩和を行わなければならないほど、中国経済は、金融収縮、いわゆる金詰まりが深刻であって、その結果が、企業倒産件数の増加や求人数の減少に表れているのである。

<汚染のひどい街の市民は実際に息ができないような状態である>

・大気汚染だけではない。中国の各地で、日本の水俣病で大問題となった水銀汚染も発生しているし、カドミウムによるイタイイタイ病も発生している。クロム汚染によるがんの発症も同様である。その結果として、その地域における異常に高いがんの発症率を示す「がんの村」が中国の至る所に出現している。

 「がんの村」の数は250カ所もあるとされ、十数年前から指摘されてきたが、

<「国土開発バブル」の崩壊とAIIBの設立>

・こうした一連の動きを見れば、中国の高度成長を支えてきたさまざまなモデルが崩壊し、政府の支持のもと、まさに「背水の陣」で大転換を図らなければならないことは明らかであろう。

・さらには、リーマン危機以降、4兆元(約50兆円)の公共事業の中心となり、急ピッチで建設を進めてきた高速道路や高速鉄道網の建設といったインフラ整備事業についても、もはや限界に達してしまっている。これ以上の建設を進めれば、採算が取れないことは明らかであり、建設した後には、膨大な維持費用を負担しなければならないという事実がどれほど大変なものか、共産党政権もようやく気がついたのである。

・その結果、201415年にかけて何が起こっているかというと、共産党政権の強い決意のもと、まず、シャドーバンキングの取り締まりの強化が行われ、次いで、過剰な生産設備と見なされた工場や、公害の原因となる古い設備しかない工場の閉鎖・解体が行われている。

 ただし、これらの荒療治は、同時に強い副作用をもたらしている。副作用とは、経済成長率の落ち込みが象徴しているとおり、景気の失速であり、企業倒産や失業の増加である。

 

・つまり、経済成長が止まってしまったとき、国民に豊かさの希望を与えられなくなったとき、共産党独裁体制は崩壊の危機に至るということを、習近平はじめ共産党幹部たちはよくわかっているのである。

 それゆえに、「窮余の一策」として出てきたのが、アジア・インフラ投資銀行なのだ。

中国から逃げ出す企業が続出している

・中国では、ここ最近、日本や米国など、先進国の製造業の国内回帰の流れが加速、企業の撤退が相次いでいる。

 日本の主要企業では、パナソニック、キャノン、シャープ、TDKなどが中国から撤退し、国内に工場を回帰させる計画だという。

・ただ、中国経済の失速を見越して、現地から撤退する日本企業の動きは間違っていない。中国側がこれまでどおり留まってほしいのであれば、「この先、中国経済は一段と成長できますよ」「国際基準のコンプライアンスを遵守し、外国企業にあからさまな嫌がらせはしませんよ」ということを示さなければならないが、現実にはきわめて難しいだろう。

<経済成長の停止がもたらす政治危機>

したがって、中国共産党の一党独裁体制は、「経済成長」がストップするか、大幅にそのテンポを鈍らせるという事態が発生すれば、必ずや政治危機につながるという厳しい条件に直面することになる。

 しかし、これまで中国経済の成長を支えてきた「国土開発バブル」は崩壊し、共産党政権がどのような手立てをしても、中国経済の失速は避けられない。バブル崩壊と、その後に続く深刻な経済危機は、過去の歴史を見ても万国共通の原則であって、中国もその例外ではあり得ない。

必ず訪れるであろう中国経済の深刻な危機に対して、習近平政権は、どう対処するのであろうか。厳しい姿勢で対処し、経済を健全な方向に戻そうとすれば、それは結果として、大量の企業倒産、失業者を生み出すことになってしまう。そうなれば、自分自身の政権の基盤が危うくなる。

 日本のような社会福祉制度がほとんどない中国では、大量の失業者たちは、一夜にして路上生活者へと転落していくことになる。

 おそらくは数百万人の「路上生活者」が、それこそ中国のすべての都市の街頭に満ちあふれることになり、寒い時期には次々に「凍死」するような悲惨な事態へと追い込まれることになっても不思議でない。

・これに加えて、中国では、若年層失業者の問題も深刻である。中国において、大学新卒者の若者たちの数は年間で約750万人にも及ぶ。これは日本の約13倍という数である。2014年には、彼ら約750万人の新卒者のうち、20%にあたるおよそ150万人が就職できなかったという数字が出ている。

 彼らの不満は増大する一方だ。就職できない自分たちを横目に、共産党幹部の子弟らは、いわゆる縁故採用で楽々と、優良企業への就職が決まっていく。彼らの政府に対する不満が、いつ爆発しても不思議ではない。

 

・失業者や職にありつけない若者たちの怒りが爆発し最悪の状況に陥ったとき、習近平政権は彼らを抑え込むことができるだろうか。それはおそらく不可能と言わなければならず、また、国民のデモや暴動に、抑圧された少数民族のナショナリズムが合わさったとき、中国の治安は完全に崩壊することになろう。

 その後に至る悲惨な状況は、おそらく筆舌に尽くせない様相を呈するかもしれない。中国全土が大混乱を経て分裂するということが想定されている。

 予想される中国崩壊の過程とその後については、第三章以下で詳しく述べるが、人民解放軍の7つの大軍区がそれぞれ独立宣言をして、互いに隣国を侵略し合う「内戦」が中国全土にわたって勃発する、最悪の事態を迎える可能性も十分に考えられるのである。

<北朝鮮の命運尽きる>

・北朝鮮としては、2014年からオープンにしていれば問題解決のスピ―ドは速かったであろうが、オープンにできない当然の理由がある。拉致という国家犯罪を国内で認めれば、政権の正当性が言えるかということになる。

 その一方、金正恩周辺で粛清の嵐が吹きまくっている。軍幹部が血祭りに上げられているのは、クーデター騒ぎが潜伏していると見るべきだろう。

 このまま行けば、北朝鮮に残された途は崩壊しかない。その前に日本は何としても拉致を解決し、日本への帰還者を救出しないといけない。

<中国崩壊のシナリオ>

中国において「無血革命」はあり得ない

・中国において、経済危機から中央の共産党政権が崩壊するようなことになったとき、あるいは、崩壊しないまでも事実上の統治能力を失ってしまったとき、人民解放軍の暴走を止められない可能性が高い。軍の動向が、中国崩壊とソ連崩壊の際の決定的な違いなのだ。

 旧ソ連の場合、軍は共産党の命令を忠実に受け入れ、一滴の血も流さずに体制の移行が完了した。中国においてもソ連のときと同じような「無血革命」が期待できるかと言えば、それは100パーセント不可能であろう。

 その理由は、中国では、いまだソ連型の「大粛清」が行われていないからである。その結果として、もっとも重要なポイントであるが、人民解放軍幹部に対して中国共産党首脳部が「文民統制」を強制し、それに服従することを求めても、必ずしも従うとは限らない。

中国崩壊、各軍区の独立、連邦国家の成立へ

<日本は大陸の紛争に介入してはならない>

<デフレで世界経済は成長する>

今後の世界はさらなるデフレ・安定の時代となる

・したがって、「平和と安定」の時代のメインストリームは、必然的に「デフレ」となる。

 無尽蔵な労働力のもとで、自由な物流の活発化、安定的な交易の拡大化は、世界に安い商品を普及させる。この流れは、良循環として、ますます拡大、加速される。

<世界的な大規模プロジェクトが進む>

・今後の世界は、まさにこの大型プロジェクトが進行する時代となる。そこにおいて果たす日本の役割も、大きくクローズアップされるであろう。世界のインフラ再編が動き出しており、それに様々なIT技術、先端技術が結びつくことによって、格段の進展が見込まれるのである。

<デフレが生む産業の活性化>

・デフレの流れが定着した1990年代以降、世界の各地でインフラ投資は拡大しているが、この動きは140年前の「大デフレ期」にも経験していることなのである。

 19世紀後半、正確には1873年から96年までの24年間は、世界経済史においては「グレートデプレッション(大不況)」と呼ばれる「大デフレ」の時代であった。

デフレ期には新技術、新発明の連鎖が続く

19世紀後半の「大デフレ期」は、驚くほど速いテンポでの「新技術」の誕生の連続した時期でもある。製鋼技術の誕生とその著しい発展があり、さらに新技術としての「電気産業」がある。

<崩壊後の中国に未来はあるか>

・最後に、話を中国に戻せば、仮に中国が民主化し自由な体制に生まれ変わることができれば、アメリカや日本の防衛負担は大きく軽減される。アメリカの第七艦隊の負担も一気に軽減され、現在のような3隻の空母でなく、1隻で十分となろう。

・共産党体制が崩壊した中国については、西側先進国との関わり方次第では、いっそうの発展を遂げられる可能性がある。西側の経済、経営、技術を導入できれば、中国の持つポテンシャルがいかんなく発揮される可能性が残されているのだ。

共産党政権崩壊後に「中国の夢」は花開く

・中国の人々は現在、非常に不幸な、悲惨な状況に陥られている。それを中国の人々が理解すると同時に、そのような状況そのものをもたらした政治体制を潰さなければいけない。それが冷たい戦争の終結なのである。

 ナポレオン戦争があり、その戦争処理が終わって、最初の安定期が訪れたのが1848年であり、その頃から活字文化が急速に発達し始める。

 

・その意味では、中国も同様である。13億を超える人口を有しながら、これはという文化人はあまり出てはいないが、出なければおかしいのである。また、ノーベル賞が科学部門で1人もいないということもおかしいのである。

 その一方、2010年、中国でノーベル平和賞を受賞した劉暁波が、いまだに獄中にあるということは、いかに痛ましい事態であるか。中国人民がいかに、文化的な生活から遠ざけられ悲惨な状況に陥っているか、彼はそのことを象徴する存在と言えるのである。

Voice  February,2016年』

『人民元の国際化が中国を追い詰める  長谷川慶太郎』

<汗も涙も流さない共産主義経済に未来はない>

<EUのプレッシャーを受けIMFが決断>

・IMFは、201610月から中国の人民元をSDR(特別引出権)の構成通貨に採用する、と発表した。

・EUが最も困っているのはギリシャ問題だ。2013年にギリシャ危機が本格化して以来、ギリシャ国債の価格が3年間で約10分の1になったため、ギリシャ国債に投資していた銀行はことごとく財務状況が悪化した。

・一方、中国政府はイギリスで、中国本土と香港以外で初となる人民元建ての国債発行を計画している。

・だが、イギリスの銀行がBISから不良債権処理をやかましく求められ、新規の貸し出しが難しくなっている。そこで、人民元建て国債を新たな資金調達の手段にしようと目論んでいるのだ。

<旧正月中に一大リストラの可能性>

・中国の経済危機はいまもなお深刻化の度合いを強めている。近いうちにその影響が、失業という形を取って明確に表れてくるはずだ。

 間もなく中国では李克強首相が主導して、国営企業を含めた過剰生産部門のリストラが始まるが、その筆頭が鉄鋼業だ。

・中国は早急に鉄鋼業のリストラに踏み切らざるをえないが、いまリストラを断行すると、鉄鋼業で働く約30万人の従業員の少なくとも3分の1のクビが飛ぶ。このままでいくと、20161月から2月中旬にかけて一大リストラが実施される可能性が大きい。

・中国では毎年1月下旬から2月中旬に旧正月を迎え、約2億人の出稼ぎ労働者が帰省などのために国内を大移動する。ところが出稼ぎ労働者たちにしてみれば、自分たちが旧正月で移動しているあいだに工場が閉鎖され、職が奪われてはたまらない。彼らが突然の失業を恐れて帰省を控えるようになれば、国内経済が潤うはずの旧正月にお金がほとんど落ちなくなり、国内経済の低迷に拍車をかけることになる。

・だが、中国が変動為替相場制に移行すれば、人民元の売り圧力が強まり為替相場が下落する。加えて、現在のような金詰まりの状況で、ドラスティックな金融業界の整理・統合や金融市場の改革、赤字企業の整理・統合を行えば、2016年の旧正月ごろに深刻な資金不足が中国全体で起こることは間違いない。

<窮地に追い込まれたフォルクスワーゲン>

・先述のとおり、中国の鉄鋼業は本来なすべき生産調整やリストラを怠り、余った鉄鋼や鋼材を世界中でダンピングして売り捌いている。その被害を最も被っているのがEUだ。

2016年も「安倍春闘」に>

・一方、わが国は0.3%台という10年物の国債利回りが物語るように、世界で最も資金があり余る国になった。10年物の国債利回りはドイツ国債でも0.5%台の後半である。アメリカ国債が2.2%台で、日銀は相場をコントロールしていないから、この指標は純粋に市場の評価によるものだった。

・長期のデフレ不況に喘ぎ、経済成長が止まった日本を各国が「ジャパン・ナッシング」などと揶揄していた10年、15年前から状況は完全に逆転し、日本は世界で最もゆとりのある「独り勝ちの国」になったのだ。

 分岐点は3年前の政権交代である。一部には批判もあるが、安倍総理が進めたアベノミクスによる金融緩和の効果はやはり絶大だった。円安と金融緩和ばかりが取りあげられているが、アベノミクスの最も大きい功績は企業の賃上げである。

・というのも労働組合は、じつは企業側に賃金引き上げを求めるうえで、“安倍総理さまさま”なのである。安倍総理も労組の動きを見据えながら、企業に賃上げを求め、非正規労働者の最低賃金を1000円に引き上げることをめざす、といった発言をしている。

<米国の利上げで人民元売りが加速する>

・今後、中国が為替市場を自由化する方向に進んだ場合、マーケットでは人民元売りが強まるだろう。次第に中国経済の体力は奪われていき、勢いを失っていくのは間違いない。

・人民元が国際通貨の仲間入りを果たしたところで、中国が経済危機から脱却できるはずがない。結局は金詰まりを解消しなければ、根本的な問題は解決せず、中国経済は追い詰められるばかりなのである。

<「汗」はわかりやすいと思うが、「涙」とは要するに企業の整理・統合である。>

・米国の利上げの影響を最も受けるのが中国である。人民元が売られ、ドルが買われる動きがさらに加速するのは明白だ。この点からも、人民元の国際化の代償はあまりにも大きいといえる。

<日本が誇る3つの財産を有効活用せよ>

・こうしたなかで20174月に消費税率を10%に引き上げたら、日本経済のデフレはさらに深刻化する。またデフレ下では直接税を中心にすると税収が不足するため、間接税を中心とした税制にシフトすることに一定の合理性があることも肝に銘じておく必要がある。

 しかし、いずれにせよ日本には大きな財産が3つある。第1に世界一の金余り、第2に世界で最も高いレベルの技術力、そして3つ目が優秀な国民性である。これらを有効に活用し、日本経済の将来を切り拓いていくことがアベノミクスには求められているのだ。

『これまでの百年 これからの百年』

いまの日本は勝者か敗者か

長谷川慶太郎   ビジネス社   2013/7/11

21世紀を生きるには>

<日本は「アジア離れ」を克服できるか>

・日本は「アジア離れ」をすることによって、経済的には世界市場を相手に原料の供給基盤、製品の販売市場を求めるという路線を導入することに成功し、これによって日本の経済は大きく成長し、発展を遂げたことは紛れもない事実である。

・また日本の国内では、マッカーサーのもたらした制度の改革をつうじ、日本の社会構造をアジア型から欧米の先進国に共通した方向に、思い切って、徹底した「改革」を加えた。これにより日本の国民は、アジアの諸国民と比べてはるかに広範な自由と選択の幅を許容されることになった。

・また同時に、アジア諸国は今日でもそうだが、まだまだ経済的に社会的にけっして世界の先頭に立ちうるだけの資格を備えているとはいいがたい。いわゆる「アジア的後進性」というものは、今日も色濃くアジア諸国の社会を支配している。

・その他すべての面にわたってアジア諸国は、世界の最先進国の水準から見れば、まだまだ大きく「立ち遅れている存在」である。日本は「アジア離れ」することによって、世界の最先端をいく先進国の領域にみずからを高めることに成功したといっても少しもいいすぎではあるまい。

<日本の先進性>

・欧米の各国へ行けば、いわゆるサラリーマンといわれる人たちは毎月1日、その月の給料は「前払い」であるのに対し、ワーカーと呼ばれる人たちは毎週金曜日の夕方、前週の金曜日からその週の木曜まで働いた労働時間数×時間給の金額を「後払い」の週休として受け取るというシステムが定着している。日本にはそういうはっきりした「差別」など、おそらくどんな中小企業であっても、どこにも存在しないといってよい。また労働基準法によって、毎月1回、きちんと全員に所定の給料日に、所定の計算方式で算定した給料を支払うことが定められているのである。

・ただし、この「個人保証」という制度は、有限責任を原則とする株式会社の経営者に対し、一種の「無限責任」を求めるものであり、もし株式会社が倒産すれば、その経営責任を持つ代表取締役はもちろんのこと、取締役全員が「個人保証」という形で無限責任を負わなければならないのである。

・こういうルール、しかも暗黙の「不文律」は、日本の周辺のどの国にも存在しない。

<日本人の課題>

・「戦争と革命」の連続する時代は終わって、「長期にわたる平和と安定の続く時代」という規定のもとに、21世紀の経済はこれまでの「インフレ基調」から一転して、本格的な「デフレ」の定着をもたらすにちがいない。

<日本人の能力>

・たとえば、日本人にとって一番重要なことは、みずからの「個性」を徹底して主張するということである。

・その方向へ向かって進むために大事なことは、官僚の統制をやめることである。官僚の規制を廃止することである。

・日本の官僚は、たしかにこれまで立派な実績をあげてきたことは事実だとしても、その実績が21世紀にわたって、さらに一段と日本の経済成長に役立つという保証などどこにもない。むしろ逆の方向に働く、すなわち、経済成長にブレーキの作用を与えるのに貢献するだけとするならば、日本の官僚組織はあくまでも徹底して「改革」の対象にせざるを得ないことは自明の理といわなければならない。

・これからの世界全体の動向は、まず経済成長が可能かどうかをすべての行動、あるいはまた情勢判断の基準に引きあげることである。21世紀は、この意味では政治の時代ではない。まさしく文字どおりの経済の時代、人類のうえにおそらく新しい課題をもたらす。新しい時代であると考えておく必要がある。日本の国民は、こうした状況の変化をどこまで自分のものとして理解できるか、これがおそらく21世紀の日本のありさまを決定する要因として、まもなくわれわれの眼前にその実相を展開していくにちがいない。

<世界の大勢を先取りできるか。無残な衰退の道を歩むか。>

・それにしても、20世紀の歴史をあらためて振り返って驚くのは、「科学的」な思考方式を誇ったはずの「マルクス主義」が、いかに歴史の解釈で理不尽な結論を一般人に押しつけたかである。たとえば、前世紀の後半、24年間続いた「デフレ」の影響を考慮するに当たって、今日われわれが享受している「社会福祉」の導入という面で、きわめて大きい成果があった結果、人類の平均寿命が大幅に延長した事実をほとんど伝えていない。その背景には、「マルクス主義」の理論家たちにとって、重要なポイントは「革命運動」に寄与するかどうかの一点にすぎず、「デフレ」による物価の下落が賃金の相対的上昇をもたらし、新技術の開発と導入による社会生活全体の近代化が一般民衆にもたらした生活水準の向上、さらに政治的な権利の拡大にともなう自由の拡大と人権尊重の向上の意義を正確に判断しようとすらしなかった結果なのである。

・もっとも、20世紀の世界に大きく影響した「共産党の一党独裁体制」は、本質的に「戦争遂行に最適の政治体制」であり、「マルクス主義理論家たち」はこの一党独裁体制に奉仕するのがその役割だったことを思えば、「平和の経済的表現」ともいうべき「デフレ」は絶対に容認できない状況と考えたのも理解できなくはない。

21世紀の世界は、その基調は完全に「平和と安定」となった。現在、世界のどの国でも戦争に国民を駆り立てる政治指導者は存在を許されない。旧共産圏諸国ですら、隣国に「戦争」を仕掛けることは絶対にない。こうした政策を提唱しただけで、かれの政治的生命は消滅する。ただ北朝鮮だけが、その唯一の例外かもしれないが、その背景にあるのは北朝鮮が中国軍、その最強の戦闘力を保有している「瀋陽軍区」が政治、経済、軍事、外交その他すべてにわたって支配しているからなのである。北朝鮮問題は本質において、中国の国内政治なのである。「瀋陽軍区」の幹部は北朝鮮のすべてを支配し、この国の活動を通じて北京の党中央と闘争しているのである。したがって、北朝鮮が国際社会の「常識」を無視した行動を展開しても、それは北京の中央指導部との闘争から生じた現象にすぎない。

2015年~世界の真実』

これは単なる予測ではない、すでに見えている現実だ!

長谷川慶太郎   WAC    2014/7/23

<国際情勢の本質を見誤るな!>

・いま、進行していることは、東アジアの「冷戦」の終結だ。つまり、中国と北朝鮮の体制の解体・崩壊が着実に進行しているということだ。

・具体的にいうなら、この地域で最強の発言力を行使してきた中国が、いよいよ崩壊寸前の危機に直面し、その対策の一環として、ここ60年にわたり事実上の“植民地”としてきた「北朝鮮」を放棄した。

・前世紀の終期に欧州正面で発生した「冷戦の終結」も事前に予測できた。著者は、ソ連崩壊の6年半以前の1985年、『情報化社会の本当の読み方』(PHP研究所)という単行本で、冷戦の終結とその結果としてのソ連の崩壊を指摘している。この正確な予測については、著者の誇りとするところであるが、その当時に利用した情報分析の手法は、30年後の今日にも有効性を失うことは有り得ない。

・「国家総力戦」での敗北は、必然的に開戦当時の政治体制を崩壊させる。逆にいえば、「冷戦発生当時の政治体制」が残っている限り、その地域での「冷戦」は継続しているのである。現在の東アジア情勢を判断するのに、中国共産党の一党独裁体制が存続している限り、東アジアの「冷戦」は継続していると判断すべきなのである。

・もはや東アジアでの「冷戦」は確実に終結の方向にある。それは具体的には、中国共産党の一党独裁体制の崩壊、すなわち中華人民共和国の解体、崩壊を意味している。この流れは、行き着く所に到着するまで自動的に進行する。どのような政策の変更、路線の修正を導入しても、この流れの進行を止めることは不可能である。あと残るのは、事態の進行の速度、すなわち、早いか、いくらか遅いかどうかしかない。

<中国の経済危機は世界の経済人の常識>

・こうしたニュースに接して、「中国は大丈夫だ」と思ってしまう。しかし、その判断は甘い。「チャイナクライシス(中国の危機)」は多方面で進行している。その筆頭に位置するのがシャドーバンキングだ。

<資金繰りの悪化で民間企業が倒産している>

・中国の国有銀行はほとんど民間企業に融資してこなかった。なぜか。民間企業を信用していないからである。民間企業の経営者は融資を受けたら即座に金を引き出して夜逃げする危険性がある。そこで、経営者が夜逃げしない国有企業を相手にする。このような事情があった。

・日本などの計算方式で算定すれば、失業率はおそらく20パーセントから30パーセントの間くらいになるだろう。

<シャドーバンキングの破綻を政府は容認した>

・こうなると、インフレを懸念しなければならない。中国のインフレ率は2013年がプラス2.74パーセントで、2014年は、プラス35パーセントと中国国家発展改革委員会が予測値を出している。その程度で収まればいいが、豚肉などの食料品の価格が高騰する事態になると、暴動を誘発する。政府は民衆の暴動を警戒しているから、インフレを抑える。そのために通貨供給量を無制限に増やせない。したがって、無差別の救済はありえない。

・それから、2008年以降、中国は高速鉄道をものすごい勢いでつくり、5年くらいの間に総延長が1万キロを超えた。この高速鉄道が「空気を運ぶ」といわれるほど乗客が少ない。したがって、赤字である。

・シャドーバンキングが弱体化しているなか、地方はどうやって資金を調達するのか。たとえ資金を得られたとしても、採算はとれるのか。インフラ投資の拡大が不良債権を増やす結果に終わるのは目に見えている。

<人件費高騰と山猫ストで外資が中国から引き揚げる>

・中国の第二次産業において深刻な問題は人件費の高騰である。年に20パーセントの賃上げが起こっている。安価な労働力を武器に「世界の工場」となったが、これだけ賃金が上がれば、とてもではないがやっていけない。

 当然ながら、中国に工場を置いた外資系企業が手を引き始めた。そこに輪をかけているのが山猫ストである。共産党がコントロールする正式な労働組合の総工会はストライキを支援しない。

・かつて中国政府は8パーセントの経済成長率を掲げた。その理由は8パーセントの経済成長がないと必要な雇用が生まれないということだった。失業者の増加は共産党政権の基盤を揺るがしかねない問題だ。しかし、中国の企業はロボット導入を止めないだろう。止めたら自分が苦しくなるからである。

<富の流出と人民元の下落に歯止めがかからない>

・中国から出て行くのは企業だけではない。富も逃げ出している。誰よりも早く、中国人の富裕層が資産を海外に持ち出し始めた。不動産にしても、国内ではなく、海外での投資が増えている。

・中国が保有するアメリカ国債は2013年末で13200億ドルだった。月に5百億ドルを売っていけば、2年強でゼロになる。為替介入をする実弾がなくなったとき、人民元は紙切れと化す。

<中国で一番深刻なのは環境汚染問題だ>

・いま、中国はものすごい勢いで公害が深刻化している。

2014年3月、北京はPM2.5を含んだ白い霧で覆われた。北京のアメリカ大使館は独自にPM2.5の濃度を検査し、ウェッブサイトで公開しているが、この日の数値は380マイクログラムだった。250マイクログラムで「重度の危険」である。どれほどひどい状態に陥ったかはいうまでもあるまい。

 テレビの映像や写真を見る分には幻想的ともいえる光景だが、そこで暮らさなければならない人は悲惨である。PM2.5を長期間吸い込むと、肺ガンや喘息を発症する危険性が高まる。北京ではここ10年の間に、肺ガン患者が6割増加したという。

<改革開放路線とは「対立関係」にある人民解放軍>

・人民解放軍は国家の軍隊ではなく、中国共産党の軍隊である。存在意義は共産主義革命で世界を開放することだ。したがって、改革開放以後、社会主義市場経済と称する資本主義路線を進む共産党とは「対立関係」にある。

<中国が解体したあとは、7大軍区に分かれる>

・原因がシャドーバンキングの破綻にせよ、景気の後退にせよ、企業の倒産は失業者を生む。その数が2億人に達するという予測もある。党幹部の腐敗、環境汚染、あるいは理財商品のデフォルトによる資産の喪失等々、不満が蓄積されているなかで、食うことのできなくなった人間が億単位で存在すれば、当然、社会は不安定化し、暴動の頻発は避けられない。それをどこまで抑え込めるか。ことは経済に止まらず、国家そのものの崩壊に至ると私は見る。すなわち、各地で起こる暴動が内乱へと発展し、人民解放軍が共産党を見限ったとき、中央政府は全土で統治能力を失う。そのあとは7大軍区がそれぞれ独立するだろう。

・どこかの大軍区が反乱を起こして北京の中央政府を倒したあとで各大軍区が独立するのか、内乱状態のなかで自然に独立していくのか、その経緯がどういう形になるかはわからない。しかし、すでに述べたように、現在、大軍区は独立国的な性格があるから、中国が解体したあとは、これが一つのまとまりとなるのは自然な流れだ。


by karasusan | 2016-04-24 19:15 | UFO | Comments(0)