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首都圏では、今後30年以内に70%の確率でマグニチュード7の地震が起きる。東京は自然災害リスク指数も世界1位。こうしたリスクもあり、首都圏以外に拠点を置いて二重生活をする人が増えている。(4)

『いま、眼の前で起きていることの意味について』

―行動する33の知性

ジャック・アタリ   早川書房   2010/12/17

<現実に意味を与える>

・事件であれ自然現象であれ死であれ、あらゆることを説明のつかないままにしておけないのが人間の本質である。人間はみずからの歴史に理解できない要素があると、それがどんなに些細なつまらないものであっても、容認できたためしがない。理解しないとは予測できないことと同義であり、さらに言えば脅威を予測できないことを意味する。これではあまりにも心もとない。

・目の前の現実にどのような意味を与えるか、それを決めるのは、この世界の最終的な当事者である人間にほかならない。

<気候をめぐる諸問題>

<気候変動について分かっていることは何か>

・いまわかっているところでは、今世紀末までに地球の気温はおよそ2℃から6℃上昇する見込みです。2なら対処可能ですが、6℃となると影響は甚大です。

 気温が6℃高い地球がどのようなものか、我々にはまったくわかりません。さらに、これはあくまでも平均気温であって、地域によってはより深刻な危険にさらされるおそれがあります。簡単に言えば、北極または南極に近づけば近づくほど、温暖化が顕著になるのです。

・温暖化の概念が、現在問題となっている気候変動をやや単純に要約したものであることも忘れてはなりません。現実には暴風雨や熱帯低気圧といった異常気象の増加、少なくともこうした現象の深刻化が数多く付随しています。熱帯低気圧は年々勢いを増してヨーロッパを襲っているし、海面は予想を超える速さで上昇しています。加えて我々は、たとえば、“奇襲型気候”に備えておかなければなりません。暖流のメキシコ湾流の流れに変化が生じれば、フランスは温暖化ならぬ寒冷化に向かうおそれがあります・・・。

<気候の将来>

・今日では、化石燃料の燃焼によるCO2の排出と気候の変化とが関連していると考えられる。原因が何であれ、結果については一般に知られているとおりである。

 気候変動によって北極の流氷が消え、北極圏が深刻な変質を被るおそれがある。やがては移住を強いられる住民も出てこよう。他方、淡水の水源が発見されるとともに、石炭の鉱脈や油田が利用可能になるだろう。

・そして、地球の北と西を結ぶ交通が開け、中国・ヨーロッパ間、ヨーロッパ・カリフォルニア間の航路が大幅に短縮される。カナダ、ノルウェー、アメリカ、ロシアを含む沿岸8カ国は激しい競争を繰り広げるだろう。ナタリー・コシュスコ=モリゼが言うように、気候変動はまた北半球の海の寒冷化を引き起こし、その影響でメキシコ湾流が、そしてヨーロッパが寒冷化へと向かうかもしれない。

・標高の低い国々は洪水に見舞われるおそれがある。まずモルジブ共和国が犠牲になる。次いで、ヒマラヤ山脈とガンジス、プラーマプトラ、メグナの三河川とベンガル湾に挟まれ、もっとも高い地点が海抜47メートルしかない。約3億人の人口を抱えるバングラデシュの大部分が地図から消える。さらに、とりわけサハラ以南のアフリカの国々が水没すると考えられる。これによって2億人から20億人の環境難民が生じるという予測もある。

・気候が様変わりして温度が上がれば、水の(農業、人間、動物、自然、産業のための)需要は増える。だが水の一人あたりの可能供給は減っている。人口が増大し、農業に大量の水を使い(現在使用される水の70%以上)、水資源は増えず、人間は豊作物を直接口にするよりもそれを飼料として肉に変える事がほとんどだからだ。水の必要量は消費するカロリーに比例する。産業の場合も同じである。

・したがって、イスラエルをはじめとする国がすでに着手しているような農業用水の管理を採用し、海水を淡水化する技術を活用しなくてはならない。これからの問題は水が手に入るかどうかではなく、水に不自由する人々に水を買う経済的余裕があるかどうかになる。

50年から100年先には、温暖化によってロシアと中国とのあいだに軍事衝突が起こる可能性がある。イスラム教を信仰する中央アジアの民族はすでにある程度、中ロ間の火種になっている。

 気候に及ぼす二酸化炭素の影響を減らすために、国あるいは国際機関によって炭素税が課され、その税収で世界のインフラを整備するしくみが実現するかもしれない。

・この先何が起ころうと我々が必要とするエネルギーの20から30パーセントは、30年後には代替エネルギーになるだろう。だが問題もある。提言に従って洋上に風車を建設していくと、フランスの海の景観は惨憺たるものになる。

 いま我々が持ち合わせている選択肢は、二酸化炭素で大気を汚すか、原子力発電によって生じる放射性廃棄物で地下を汚すか、の二つしかない。

・いまから50年もすれば、太陽光発電の技術は他のさまざまなエネルギーに完全に取って代わるだろう。現在の技術水準でも、サハラ砂漠の一部を太陽光パネルで覆えば、アフリカ全土にエネルギーを供給できる。

『未来を透視する』

ジョー・マクモニーグル ソフトバンククリエイティブ 2006/12/26

<自然災害>

2014年~2023年、ハワイ諸島で大きな火山活動が発生する>

・今後百年の間に以下に挙げる地域でほぼ間違いなく大きな地震が起こるだろう。いずれもリヒタースケールでいうと、少なくともマグニチュード8.5から8.8。まさに壊滅的な大地震だ。詳細は年表で示すが、年代は前後に5年位の誤差を見ておくのがいい。

2013コム(イラン)

20132015ロサンゼルス

2018カタニア付近(伊シチリア)

2022シワス付近(トルコ)

20222023サンフランシスコ

2026マハチカラ付近(ダゲスタン共和国)

2028ムルタン付近(パキスタン中央部)

2031メキシコシティ(メキシコ)

2033蘭州付近(中国)

2038グアテマラ・シティの東方280km

2039愛知県名古屋市と三重県松坂市の間

2041バルディビア(チリ南方)

2044トルヒーヨとチクラヨの間(ペルー)

2050ニューヨーク州の北部

2056ラパスから160km南方(ボリビア)

2056アムラバティ(インド中央部)

2056ミンダナオ島(フィリピン)

2061サンディエゴ(カリフォルニア)

2071ビスクラ付近(アルジェリア)

2077アンカレジとキーナイの間(米アラスカ)

2078衡陽(中国南部)

2035年までに、米国では真水の確保が大きな問題となる>

・また、2030年までには、北米の低地、それも中西部の大河沿いの地域で、洪水がいまよりもはるかに頻繁に起きるようになる。

・気象変動と継続的な水位上昇の結果、2041年までに、世界中の大都市で一部区域が放棄されるか、居住・事業以外の目的に転換されるだろう。

2050年の終わりまでに、世界中の沿岸部全域で平均水位の大幅な上昇が始まる。同時期に飲料水の確保も問題になるだろう。これに先立ち、2038年までに、平均海面の上昇が始まる。上昇の度合いはだいたい75センチから120センチメートルくらい。北極と南極の氷冠が急激に解け出すのが原因だ。融解現象はすでに始まっているが、2038年ごろにはさらに加速している。2080年までに、極地の氷冠はほとんど消え去るだろう。

2055年までには、飲料水を運ぶ数多くのパイプラインが、南北のアメリカ大陸をまたがるようにして張り巡らされているだろう。

・気象変動のもう一つの影響として、ハリケーンの頻度と破壊力がぐっと高まることも挙げられる。米国では2025年までに、年間平均25から30回発生するようになり、少なくとも2回は壊滅的な被害をもたらすだろう。

2041年、日本とハワイを結ぶ太平洋上に、新たに列島が隆起する>

・日本とハワイを結ぶ太平洋上の真ん中に、新たな列島が形成される。まず、海底火山の大規模な噴火活動が9年間続いた後、2041年に最初の島が海上にあらわれる。

2050年の世界地図』  迫りくるニュー・ノースの時代

ローレンス・C・スミス   NHK出版  2012/3/23

<人類の未来にとって「北」の重要性が拡大することーを、まったく初めて見いだそうとしていた。>

・私の専門は気候変動の地球物理学的影響だった。現地で河川などの流量を計測し、氷河の先端を調べ、土壌サンプルを採取するなどした。 

・科学的研究から、北部地方(北半球北部)では気候変動が増大しはじめていることがわかったが、その結果、北部地方の住民と生態系はどうなるのだろうか。

・政治的および人口構造的な傾向、あるいは、海底の下に埋蔵されていると考えられている膨大な化石燃料については、どうだろう。世界各地で増大している、さらに大きな温暖化の圧力によって、地球の気候はどう変化しているのか。そして仮に、多くの気候モデルが示唆するように、地球が殺人的な熱波と、気まぐれな雨と、からからに乾いた農地の惑星になったら、現在は定住地として魅力に欠ける場所に新たな人間社会が出現する可能性があるだろうか。

21世紀、アメリカ南西部とヨーロッパの地中海沿岸部が衰退し、逆にアメリカ北部、カナダ、北欧、ロシアが台頭するのだろうか。調べれば調べるほど、この北の地域はすべての人類に大いに関連がありそうだった。

・長年の研究の末、私は「北」-および人類の未来にとって「北」の重要性が拡大することーを、まったく初めて見いだそうとしていた。

<しのびよる異変>

・「予測は非常にむずかしい。未来についてはなおさらだ」

・身近な野生生物を見るのが好きな人は、ひょっとしたら気づいているかもしれない。世界各地で、動物や魚や昆虫が緯度や高度のより高い地域に移動している。

<思考実験>

・これは私達の未来についての本だ。気候変動はその一要素に過ぎない。人口、経済統合、国際法などの面で、ほかの大きな潮流も探る。地理と歴史も調査し、既存の状況が将来まで痕跡を残す様子を示す。最先端のコンピュータモデルに目を向けて、将来の国内総生産(GDP)、温室効果ガス、天然資源の供給を予測する。これらの潮流を総合的に探り、合致する部分や類似点を突き止めれば、このままの状況が続いたら、今後40年間でこの世界がどんなふうになるのか、それなりの科学的信憑性を持って想像できるようになる。これは2050年の世界に関する思考実験だ。

2050年の世界はどうなっているだろうか。人口と勢力の分布は?自然界の状況は?優勢になる国、苦境に陥る国は?2050年、あなたはどこにいるのだろう?

 これらの問いに対する答えは、少なくとも本書では、中心となる議論から導き出されるー北半球北部が今世紀のあいだに大変な変化を経験して、現在よりも人間活動が増え、戦略的価値が上がり、経済的重要性が増す、という議論だ。

・この「ニュー・ノース(新たな北)」は、私の大まかな定義では、アメリカ合衆国、カナダ、アイスランド、グリーンランド、(デンマーク)、ノルウェー、スウェーデン。フィンランド、ロシアが現在領有する、北緯45度以北のすべての陸地と海だ。

・これら8カ国は、北は北極海まで広がる広大な領土と海を支配し、北極海をほぼ一周する新たな「環北極圏」を構成する。第2部と第3部では、こうした環北極圏の国々本書では新たなNORC諸国またはNORCs(NorthernRimCountries)と呼ぶーにおける開発について探る。第1部では、人口、経済情勢、エネルギーと資源に対する需要、気候変動といった、世界の文明と生態系にとって極めて重要な要因における、世界規模の大きな流れを紹介する。第1部では、2050年にはほとんどの人類の生活がどうなっているかを想像するだけでなく、ニュー・ノースの誕生を促している重要な世界的圧力のいくつかを突き止める。

この2050年の世界をめぐる旅に出かける前に、いくつかルールを決めておこう。

<守るべきルール>

・しかし、どんな実験でも、結果を得るにはまず、前提と基本原則を決めなければならない。

1、「打ち出の小槌」はない。今後40年間の技術の進歩はゆるやかだと仮定する。

2、第三次世界大戦は起こらない。

3、隠れた魔物はいない。10年間に及ぶ世界的不況、死に至る病気のとどめようのない大流行、隕石の衝突など、可能性が低く、影響は大きいできごとは想定していない。

4、モデルが信用できる。本書の結論の一部は、気候や経済といった複雑な現象のコンピュータモデルを使った実験で得られたものだ。モデルはツールであって、神託ではない。欠点や限界はつきものだ。

<なぜ40年後の未来を予測しようとするのか>

<四つのグローバルな力>

・第一のグローバルな力は人口構造、いわば異なる人口グループの増減と動きのことだ。

・第二のグローバルな力―第一の力とは部分的にしか関連がないーは、人間の欲望が天然資源と生態系サービスと遺伝子プールに対する需要を増大させていることだ。

・第三のグローバルな力はグローバル化だ。多くのことに言及するわかりにくい言葉で、最も一般的にはますます国際化する貿易と資本の流れをさすが、政治的、文化的、理念的な面もある。実のところ、グローバル化にはそれを研究する専門家と同じくらい多くの定義がある。

・第四のグローバルな力は気候変動だ。ごく単純に、人間の産業活動が大気の化学組成を変化させているので、気温全体が平均すると必ず上昇することは事実として観測されている。

・以上の四つのグローバルな力(人口構成、資源の需要、グローバル化、気候変動)は私たちの未来を方向づけるだろう。本書でも繰り返し登場するテーマだ。

・四つの力のあいだを縫うように流れる第五の重要な力は、技術だ。とりわけ、第3章でくわしく取り上げるエネルギー関連の新技術が最も重要だ。バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、材料科学の進歩は、単なる資源ストックの需要に影響する。スマートグリッド、太陽電池パネル、地球工学は気候変動と闘うだろう。

21世紀の大干ばつ?>

・「おそらく、現在、北アメリカ西部は21世紀の大干ばつを迎えている」

<自然災害リスク評価の崩壊>

・モンタナ州のグレイシャー国立公園では2030年には氷河がすっかり消えているだろう、と大方の氷河学者はみている。

・季節的な雪塊氷原は夏を越さないので、氷河のように年々水をため込んでいくことはできないが、やはり極めて重要な保管庫だ。

<湾岸都市の水没危機>

・モデルによって、2050年に海面はおよそ0.2メートルから0.4メートル、つまり、ふくらはぎくらいの高さまで上昇するわけだ。

・今世紀の終わりには、世界の海面は0.8メートルから2メートル上昇する可能性がある。大変な水かさだー平均的な成人の頭くらいの高さになる。マイアミの大半は高い堤防の陰になるか、住民がいなくなるだろう。メキシコ湾岸からマサチューセッツ州まで沿岸部の住民は内陸に引っ越すだろう。バングラデシュのおよそ4分の1に相当する面積が水没するだろう。海面が上昇すれば、沿岸部の集落はどこも深刻な状況に直面する。

・人口増加、経済成長、地下水の汲み上げ、気候変動がこのまま続けば、2070年には、リスクにさらされる人口は3倍以上増えて15千万人になる見込みだ。リスクにさらされる資産の総額は10倍以上増えて35兆ドル、世界のGDP9パーセントに達する。危険度上位20位までの都市では、2070年には、リスクにさらされる人口が1.2倍から13倍になり、リスクにさらされる経済資産は4倍から65倍になる。これらの主要都市の4分の3-そのほとんどがアジアにあるーがデルタの上に位置している。きっと、これまでにないタイプの防衛支出が大いに注目を集めることになる。それは、沿岸防衛と呼ばれるものだ。

2050年を想像する>

・ここで紹介するのは、ウォーターGAPによる2050年の予測のうち、典型的な「中庸」のシナリオだ。ウォーターGAPのモデルパラメーターをどういじろうと、全体像ははっきりしている。人間集団が最も深刻な水不足にさらされる地域は現在と同じだが、状況はさらに深刻化する。これらのモデルからわかるように、21世紀半ばには、地中海、北アメリカ南西部、アフリカ北部および中東、中央アジアとインド、中国北部、オーストラリア、チリ、ブラジル東部が、現在よりも過酷な水不足に直面することになりそうだ。

『未来を透視する』

(ジョー・マクモニーグル) FBI超能力捜査官

(ソフトバンク・クリエイティブ)2006/12/21

気象変動

・来るべき気象変動により、2008年からこの台風の発生回数は増えていくと私は、予想している。とくに2011年は過去に例を見ない台風ラッシュとなり、大規模な暴風雨が吹き荒れる深刻な年になるとの透視結果が出ている。この台風ラッシュは、2012年にずれこむかもしれないが、可能性は低い。嵐の増加を促す地球の温暖化は、現在も急速に進行中だからである。

2010年から2014年にかけて、また、2026年から2035年にかけて、平均降雨量は年々560710ミリメートルずつ増加する。現在から2010年にかけて、また、2015年から2025年にかけては、380530ミリメートルずつ減少する。現在から2010年にかけて、また、2015年から2025年にかけて、平均降雪量は300550ミリメートルずつ増加する。

『未来を透視する』   ジョー・マクモニーグル

ソフトバンク・クリエイティブ    20061226

<日本の自然災害>

2010年、長野で大きな地震が起きる>

・透視結果を見てもうろたえず、注意程度にとらえてほしい。ただし、最悪の事態に備えておいて、何も起こらないことを願おう。こと天災に関しては、透視は間違っているほうがありがたい。

<今後、日本で発生する大地震>

2007年  高槻市  震度6

2008年  伊勢崎市 震度6

2010年  長野市  震度7

2012年  伊丹市  震度6

2018年  東京都  震度6

2020年  市川市  震度6

2037年  鈴鹿市  震度7

・噴火や地震にともなって海底では地盤の隆起や沈降が起きる。そして、膨大な量の海水が突然動きだし、衝撃波となって陸地の海外線へと進行する。

・遠洋ではあまり目立つ動きではないが、浅瀬に入ると、衝撃波は巨大な津波となって陸地を襲い、都市部などを徹底的に破壊してしまう(波の高さはときには30メートル以上になることもある)。

・内陸へと押し寄せる力がピークに達すると、今度は海に戻り始め、残された街の残骸を一切合財引きずりこんでいく。警告もなしに、突然襲ってくれば被害はとりわけ甚大となる。

・幸い日本には、優良な早期警戒システムがあるのだが、海底地震が発生して警報が発令されてから、津波が押し寄せる時間は、残念ながらどんどん短くなっている。

<日本を襲う津波>

2008年夏   11メートル

2010年晩夏  13メートル

2018年秋   11メートル

2025年夏   17メートル

2038年初夏  15メートル

2067年夏   21メートル

日本は津波による大きな被害を受けるだろうなお、波の高さが10メートル以上に及ぶものだけに限定している)。北海道の北部沿岸の都市部は特に津波に弱い。徳島市、和歌山市、浜松市、鈴鹿市、新潟市、石巻市も同様である。このほかにも津波に無防備な小都市は数多くある。

<土地>

・気象変動とともに、日本の土地問題は悪化しはじめる。沿岸部での海面上昇と、暴風雨の際に発生する大波によって、低地の村落と小都市の生活が脅かされるようになる。堤防や防壁といった手段は効力を発揮しないため、2012年から2015年のあたりまでに多くの人が転居を余儀なくされるだろう。

『ドラッカーの遺言』

ピーター・F・ドラッカー 講談社    2006/1/20

・情報化が進展する新時代の世界経済のもとで、最も苦労する国は日本である―――。

<時代の変わり目に入る自覚を>

・重要なのは、「時代の変わり目」にいま自分がいるということを明確に認識できることです。

<日本の“いま”>

20世紀の歴史を作った国>

・かつて私は、「隆盛を極めた日本の歴史こそが、20世紀の世界史そのものであり、現在の世界経済を生み出したのは日本である」と主張しました。どんな側面を採り出しても、いかなる観点から分析しても、日本が他の国に比べ、少なくとも同等か、それ以上の成功を収めてきたからです。

<通用しなくなった武器>

・しかし、先に詳しく紹介した「時代の変化」が、あなたたちの国を苦しめています。前世期には万能の武器とも思えるほど威力を発揮し、日本をかつてない大成功に導いた旧来の手法が適用しなくなり、あまつさえ足かせになってしまう状況が訪れたからです。

<「日本の危機」の嘘>

・「失われた10年」という言葉に代表されるように、この十数年間、「日本が危機的状況に瀕している」という言われ方が幾度となく繰り返されてきました。――明らかな間違いです。日本が直面しているのは危機ではなく、時代の変わり目=移行期だからです。

<時代は変わった>

<変化を拒絶してはならない>

・日本がいますぐ取り組まねばならない課題――それは、時代が変わったことを認め、その変化に対応していくための意識改革です。それでは、日本が直面している変化とは何でしょうか。

<保護主義死す>

・一つめの変化は、日本を成功に導いてきた原動力である「保護主義」が適用しなくなったことです。情報がグローバル化し、トランスナショナルな経済の勃興で一国内での金融政策が無力化したことはすでにお話ししましたが、まさしくこの二つによって保護主義は息の根を止められました。

<情報革命に勝てない>

・かつては自国の農業を守るため、そして現在の先進国では製造業を守るために、保護主義的な政策が採られることがままあります。しかし、グローバル化した情報=すなわち情報革命と、保護主義とは、互いに相容れないものであることを十分に認識しなくてはなりません。

<自身の歴史を知らない日本>

・保護主義とはすなわち「変化への拒絶」ですから、新しい時代への入り口で足かせとなるのは自明の理であると言えるでしょう。保護主義と同様に前近代的な旧来の因習を引きずり、日本の変革を阻害しているのが官僚システムです。

<ローテーション制度を導入せよ>

<強固な防護壁>

・保護主義に絡めて一言申し添えるならば、最も効果的に日本を外部から保護しているのは「言語」であるということです。難解で、他の言語とは大きく異なった特徴を持つ日本語を母語にしていることは、関税など、他のいかなる保護政策よりも効果的に日本を守ってくれています。

<大いなる遺産>

・日本で外国人が務めることができるのは、経営トップとしての役目だけでしょう。現場の実務を担当するには言葉の壁が高すぎ、結果的に仕事は日本人が行うことになる。日本語の壁は、外部に対するかくも強力な盾の役割を果たしているのです。

<「言葉の壁」が作る影>

・しかし、言葉の壁に守られていることは、あなたたちの強みであると同時に、弱みであります。ただ、一つグローバル化された存在である情報の多くは、世界の主要言語たる英語で流通されています。先に紹介したインドの例とは対照的に、日本人は情報へのアクセスに苦労する可能性があります。

<”仕事“に起こった変化>

<進行しつつある二つの変化>

・日本が直面しているもう一つの大きな変化、すなわち労働市場で進行しつつある変化についてお話ししましょう。

 労働市場の変化には二つの側面があり、「労働の質」と「労働を担う世代」の両面で進行しています。

<国際競争におけるただ一つの尺度>

・「質」の変化としては、ブルーカラーが担ってきた「労働集約」的な仕事が重みを失い、ホワイトカラーが中心を成す「頭脳集約」的な仕事、すなわち「知識労働」がますます重要性を増してきました。

 私はかねて、現代の国際競争において意味を持つのは唯一、「知識労働における生産性」のみであると指摘してきましたが、その傾向がますます強まっています。

<企業に起こった変化>

・労働の質を劇的に変えた原因は、企業に生じた大きな変化にあります。バブル期の日本企業に代表されるように、かつての国際企業はさまざまな国にできるだけ多くの資産を「保有」することを重視し、いかに資産――土地であれ、企業であれ――を増やすかに狂奔しました。

 しかし、21世紀の国際企業が最重視しているのは「戦略」です。いかに効率的に経営できるか戦略を練り、研究・開発をコントロールしていくかに知恵を絞る頭脳労働=知識労働が、その中心を成しているのです。

 実際アメリカでは、すでに単純労働的な仕事はなくなっており、製造業関連の労働者数は10パーセント強に過ぎません。他方、日本ではいまだに就業人口の20パーセントほどを占めています。

<飛行機の中で過ごす人生はムダ>

・新しい時代の製造業は労働集約型ではなく、頭脳集約型のものになるからです。アウトソーシングには不向きで、プロジェクトに従事する人間が顔と顔を突き合わせて、直接やりとりすることで進捗が見込めるタイプの仕事になります。

<いま求められている経営構造>

・議論をすべきは「雇用の輸出」に対する不安についてではありません。事業計画を立案し、設計やデザインを考え、マーケティングや研究開発に知恵を絞ること、そして自ら手がける必要のないものを選別してアウトソーシングすること――すなわち、「戦略」を管理する経営構造の確立こそ、知識労働時代の最も重要な課題であるべきなのです。

20年後の日本に期待する>

・この課題を乗り越え、知識労働の生産性向上に努めてゆけば、20年後の日本も、いまと変わらず世界の製造業のメインパワーであり続けるでしょう――計画、設計とマーケティングなど、高度な頭脳だけを国内に残す形で。

<新しい時代の企業像>

・新しい時代の国際企業は、従来の「すべてを自ら保有する形」から、「事業提携や合弁を基盤とした戦略型」にシフトします。従来の西洋の企業より、日本の得意とする経営手法に近いものと言えるでしょう。

 日本の企業は、きわめて明確に、新しい企業像を模索する方向に向かっている――私はそう考えています。

<知識労働の生産性をいかに上げるか>

・それでは、知識労働者の生産性を上げるには、何をすればよいのでしょうか。過去30年間にわたってこの問題に取り組んできた経験から見出した、いくつかの事実についてご紹介しておきましょう。この問題の大前提として、現代の知識が、その定義上、高度に専門化・細分化していることを把握しておかねばなりません。

<昇進制度を整備せよ>

・知識労働者のための昇進制度を整備する必要があるでしょう。

・知識を生産的にすることが、競争を可能にするただ一つの方策である。

<日本が進むべき道>

<情報経済で立ち後れた国>

・しかしながら、日本が直面している問題は、経済の停滞ではありません。問題は、あなたたちの国が情報技術の分野、ひいてはグローバル化した情報に基礎を置く世界経済=情報経済の進展の中で、ひどく立ち後れてしまっている点にあります。

<最も苦労する国>

・国際的な金融機関や製造業においては強みを持つ日本ですが、革新技術や情報の分野でリーダーになり得ていません。情報経済が主軸となる今後の世界経済の中では、日本が最も苦労する国になるでしょう。

<「日本の台頭」の本質>

・第2次世界大戦後の日本が強大な力を発揮し、歴史上稀に見る発展をなし得たのは、自国内で事業を行い、独自の伝統的経営手法と労働力を保ちつつ、西洋の最新技術を導入することに成功してきたからです。日本の台頭とは、「和洋の統合に成功した企業の台頭」でした。

・情報経済が主軸となる新時代の世界経済のもとで、最も苦労する国は日本である。つねにイノベーションを追求し、新しい価値を生み出すことでしか、日本が生き残る道はない――。

<絶えざるイノベーションを>

・東洋に属しながら西洋の一部になり得たことが、日本を成功に導いた最大の要因ですが、その結果、日本は非常にハイコストな国になってしまいました。ハイコストな日本が生きていくためには、絶えざるイノベーションと、それによって生み出される新しい価値を輸出し続けていくことが要求されます。

<情報技術をリードする存在になれ>

・日本には情報技術に関する潜在能力はありますが、いまだ成果を挙げることができずにいます。情報技術の分野でイノベートする術を学び、進展する情報経済の中でリーダーとならなければ、日本が生き残る道はないでしょう。

<チャンスに目を凝らせ>

・あなたたちの多くが「問題重視型」の思考様式に囚われていて、「機会重視型」の発想を持っていないことを危惧しています。

<変化の陰に好機あり>

・繰り返しになりますが、私たちはいま、転換期に生きています。ところが、多くの人々は、そのことを理解していません。変化は予測できず、理解することも困難で、みなが考える常識に反する形で起こるからです。しかし、変化した現実に考え方をすり合わせていく過程にこそ、好機は訪れます。

<成果を挙げる唯一の方法>

・絶えざるスキル・アップを達成するために最も重要となるのは、自分の強みを把握することです。自分が何を得意とするかを知り、磨きをかけていく――これこそ個人のイノベーションの要諦であり、成果を挙げ続けていくための唯一の方法です。

・ところが現在では、学校教育の修了時こそ、真の意味での学習の開始時期を指し示しているのです。

<「株主資本主義」の嘘>

・株主の利益を最大化することに努めるこの考え方は、事業における最優先順位に混乱を生じさせます。事業にとって、あるいは経営者にとって、最優先すべきは決して株主ではありません。経営者が自身や株主の利益を考え始めたら、決して事業がうまく回転していくことなどありえないのです。

20世紀の著述家で、ピーター・ドラッカーほど、より多くの人に、より甚大な「良い影響」を与えた人物はいないでしょう。世界中のどこでも、経営者が労働者に存分の腕を振るわせているところには、ドラッカーが存在しています。経営者が「その人間性で人を導き」「結果を重視して経営する」ところには、ドラッカーの存在があるのです。従業員がコストではなくパートナーとして扱われているところにはドラッカーの存在があるのです。


by karasusan | 2017-07-16 20:59 | その他 | Comments(0)